第10章 天童覚 手に入れたくて
天童side
「ねぇねぇ花澄ちゃん、それ一口ちょうだい?」
『えっ?わぁっ!!』
土曜日の部活終わり
校門の前で花澄ちゃんがぽりぽりとうさぎのように齧っていたポッキーを
反対側からパクっと食べてやると大きな目をさらに大きく見開いてビックリしている
「彼氏待ってんの?」
『う‥うんっ!バスケ部まだみたいだから』
「ふーん‥あいつとまだ付き合ってたんだ‥」
『えっ?なんて‥?』
「なーんでも!じゃあまたね〜」
ひらりと手を振ると可愛い笑顔でバイバイと手を振り返してくれる
俺がずっと片思いしている相手
バレー部のマネージャー
「さて‥どうやって奪おっかな〜♪」
周りから距離を置かれる事が多い俺に臆する事もなく喋りかけてきて
若利君とも仲が良いからよく3人で帰っていた
いつも俺たちの為に一生懸命で
強豪校を陰ながら支えてくれるマネージャーに恋をして
好きって気持ちを伝えたくても
初めて恋した俺にはなかなか伝えられなくって
それでも俺達と楽しそうに話してるその姿みてたら十分幸せだったしこのままでも良いかな〜なんて思ってた
そんな部活終わりのある日
体育館で片付けをしていたら
顔を赤くして小さな声で話しかけてきた花澄ちゃん
『天童君‥私‥彼氏できたの‥だから帰り一緒に帰れなくなっちゃった‥』
「へ〜?良かったじゃん?で、どいつ?」
おずおずと指差す先にはバスケ部の男がいた
ずっと俺達だけの花澄ちゃんだと勝手に心のどこかで思ってたから
人のもんになったと思った瞬間にどうしても手に入れたくなった
「今日もあいつと帰んのかよ」
「どうした天童‥?なんか調子悪いのか?」
若利君が俺の隣に並んで歩き始める
「ん〜なんでもないよ?帰ろっか!」
せっかく見つけた俺の楽園
その中でも花澄ちゃんの存在は大きかった
「ま、そのうち手に入れるから待っててネ〜花澄ちゃん」
「白鷺さんがどうかしたか‥?」
相変わらず真面目な若利君