第9章 影山飛雄 可愛いのは
影山side
「あれって二年生のめっちゃ可愛くて有名な人だよね?!影山君の彼女なのっ?!」
「才能もあってイケメンで‥あんな可愛い彼女がいるとか影山マジで羨ましすぎんだろ‥」
ザワザワとした周りの空気には気付かず
おもちゃを買ってもらう子供のようにワクワクとした目で俺が焼くたこ焼きを見つめている
「お待たせしました‥」
いつもよりも丁寧に焼いた綺麗な丸いたこ焼きを花澄さんに渡す
『わーっ!!美味しそうっ!ありがとうね!』
両手を伸ばして嬉しそうに受け取る花澄さんがやっぱりしぬほどかわいい
『ん〜っ!!おいひいっ‥!!』
小さな口ん中にハムスターみたいにもぐもぐとタコ焼きを頬張りながらふにゃりと笑う
その姿にクラス中のやつらが息をのんだ
あぁ‥可愛い‥早く帰って俺だけのもんにしたい‥
店番に戻って作業をしながらたこ焼きを食べる花澄さんをチラチラと見つめる
「うわーーーーーん!!たこ焼き落としちゃったぁーーー!!」
突然大きな声が聞こえてパッと見ると小さな男の子がたこ焼きを地面に落として泣いていた
「あらあら‥でももうあとちょっとだったんだし行くわよ!」
「やだやだー!!まだ食べたい〜っ!!」
その子のお母さんらしき人がたこ焼きを拾って歩き出そうとすると男の子の前にパッとしゃがみ込む花澄さん
『ねぇねぇ‥良かったらこれ食べてくれたりする??お姉さんの大好きな人が作ってくれたんだけどね‥お腹いっぱいで食べれなくて困ってたの‥残したくないし食べてくれたら嬉しいんだけど‥どうかな?』
「えっ?!いいのっ?!」
その子が嬉しそうにたこ焼きを受け取って花澄さんも嬉しそうな顔でその子の頭を優しく撫でている
「本当にすみませんっ‥ありがとうございます!!」
『いえいえっ!私も助かりました!ありがとうございます!』
親子が頭を深く下げて教室から出て行く
今日は店番が忙しくて殆ど何も食べれてなかったからお腹空いたってさっき言ってたのに‥
花澄さんの優しさにまた胸がキュンと締め付けられる