第5章 澤村大地 剥き出しの嫉妬心
澤村side
何度鳴らしても出ない電話
心臓がうるさいくらいに音を立てる
頼む‥
頼むから無事でいてくれ‥
大きな多目的トイレ
使用中の赤いマーク
怪しまれないように少し距離をとって耳を澄ませる
俺の考えすぎでありますように‥
額を嫌な汗が流れる
ドクドクと心臓の音だけがやけに響く
「順番な?!次俺達にも挿れさせろよっ?!」
さっきまでこそこそと小さな話し声しか聞こえなかったが突然若い男達の声が聞こえてドアに耳をつける
また声を潜められたのか小さな声で何を話してるかまでは分からない
くそっ‥
もし万が一普通に使用している人だったら洒落にならない
でもさっきの声と台詞‥絶対におかしいよな?!
怒りと花澄が襲われているかもしれない恐怖で身体が震え出す
『いやっ‥!!!だいちっ‥!』
聞き間違えるはずがない
ブチッと自分の中で何かが切れる音がする
俺の愛しい彼女の泣きそうな声が聞こえてきて目の前のドアを力一杯蹴破る
若い男2人が花澄の両脚を大きく開かせるように抱き抱えていて
前に立った若い男は大きなモノを手に握って
今にも花澄のナカに入ろうとしているところだった
頭に血が登って顔が怒りで熱くなるのに
指先からは血の気が引いて冷たくなっていくのがわかる
身体が恐怖と怒りで震えて止まらない
大切に大切にしてきた俺の花澄
その花澄が大きな目から涙をぽろぽろと溢している
「あんた達‥俺の花澄に手出して‥絶っ対に許さねぇ‥」
今すぐにでも殴り倒してやりたい気持ちをグッと堪えて右手で握っていた携帯電話で警察へ電話をかける
今いるトイレの場所を受話器に向かって叫んだ
「やべっ‥逃げんぞ‥!」
花澄の身体から手を離した男達が急いでズボンを上げて扉の方へと走ってくる
「逃すわけねぇだろ‥」
右足で扉を蹴って入り口を塞ぐように立つ
死んでも逃さねえ
暫くするとバタバタと警察官がやってくる
通話ボタンを押したままにしていた携帯から状況を察したのか近くにいた警察官が駆けつけてくれたようだ