第1章 恋の季節【空回り】
それからあっという間に時間は過ぎ、気づけば放課後
「それじゃ、あたし今日塾だから」
「あたしもパパに早く帰れって言われてるし、先に帰るから~」
『あ、うん!また明日~』
ナツコとハム子と別れ、1人教室に残る私
そう、私が放課後教室に残る理由…それはただ1つ!
沖田と一緒に帰るためである!!
と言っても約束してるわけじゃないから、いつも沖田には逃げられちゃうんだけど…。
今日こそはちゃんと彼の教室の前でスタンバって、意地でも2人で帰ってやるんだから!!
そんなことを考えながら沖田の教室に向かって歩いていると
「お、おー大石」
丁度前から歩いてきた私のクラスの担任である服部先生に呼び止められた
「お前まだ残ってたのか…」
『Z組を待ってるんです』
「Z組ならまだ当分終わんねーぞ。」
『えっ、どうしてですか?』
「なんか隣のクラスの奴の給食費が盗まれたとかなんとかで、犯人は他のクラスにいるかもしれねェんだが面倒臭ェからクラス内で適当に見繕うことにしたんだとよ」
『えええ!?どんだけ適当なのあの先生!!』
「…だが未だに犯人が名乗り出ねェっつってなかなかHRが終わんねーみてェだ」
『いや名乗り出るわけないでしょ!犯人いないかもしれないんだったら!!』
Z組の銀八先生って…確かにいつも死んだ魚のような目してるけど…そんな適当な先生だったの?
「つーことで大石、当分終わらねェZ組を待ってる間お前に頼みがある」
『頼み…?』
眉間にシワを寄せて服部先生を見つめると、次の瞬間ドサッと私の両手にノートの山が入ったダンボールが置かれた
『重ッ…なんですかこれ』
「悪ィな大石、ちょっくらこれ職員室に持ってっといてくれねーか?」
『は、はぁ!?何で私が…先生が持っていけばいいじゃないですか!』
「俺ァこれからポラギノール買いに行かねーといけねーの。最近ほんと痔がやばくてやばくて……んじゃあとは頼んだぜ」
『ぁあ、ちょ!…』
言い終える前に服部先生は忍者のようにそそくさと去って行った
ウチの担任もZ組の担任とあんまり変わらないような気がするな…