第4章 占いは信じなくても当たる時は当たる・後沖田視点【星の砂⭐︎】
それから少し通りを歩いていると突然大石が立ち止まり目を大きく見開いた
『何かいい匂いする!』
「…あぁ、みたらし屋だな」
『食べたい…』
「買って来いってかィ?調子いいなお前」
つか、ほんと甘い物好きだなコイツ…。
見てる方が気持ち悪くならァ。
俺が買って来るまで断固として動かないとでも言うような大石の目に渋々懐から財布を出し、仕方なくそのみたらし屋に向かった
足を進めようとしたその時、店から出て来た人物の姿に俺は思わず目を見開いた
「んじゃな、オヤジ…また来るわ」
「まいど~旦那!」
あれは…万事屋の旦那?
相変わらず暇そうにフラフラと歩いて行く旦那を呆れながら見つめていると、ふと隣にいた大石が旦那の姿を指差し言った
『あ…私、あの人知ってる』
え…。
「お前…万事屋の旦那のこと知ってんのかィ?」
振り向き言う俺に大石は黙って頷いた
『うん…
よくケーキとかパフェとか食べさせてくれた気がする』
「って食い物かィ…」
大石の言葉に拍子抜けし、ガクッと肩を落とす
けど…
- ねぇごりらさん、この男の人は誰? -
俺の事は忘れてるくせに
- 私、あの人知ってる -
旦那のことは覚えてんのかよ…。
少し痛む胸を押さえ大石に振り向くと、そんな俺の気持ちも知らない彼女は旦那を見つめ無邪気に微笑んだ
「会いに行きてェかィ?」
『うん!会いたい!』
「んじゃ自分で旦那に声掛けて来い、俺ァここで待っててやらァ」
俺の言葉に大石は勢いよく頷き、旦那の方へ忍び足で歩いて行く
…さすがに大石がこんな姿になったと知れば旦那も黙ってはいねェだろうな。
まず俺や土方さん達は半殺しにされるだろうし…
そんで旦那のことだから幼児化したコイツを余計に甘やかして…真選組には置いておけねぇなんて言い出すかもしれねェ。
そうなったら近藤さんも土方さんも賛成…して…
そしたら俺は…
「…。」
次の瞬間、気づけば身体が勝手に動いていて俺はそのまま大石の腕を掴み旦那のいる方とは真逆の道を歩いた
『えっ…あ…あのお兄さんは?』
「やっぱりやめた」
『え…?』