第4章 占いは信じなくても当たる時は当たる・後沖田視点【星の砂⭐︎】
屯所を出てしばらく通りを歩いていると先程まで大はしゃぎだった大石は急に大人しくなった
まぁ無理もねェか、子供の頃の記憶しか残ってないならこの江戸の街もほとんど歩いたことがねェんだろうな。
トボトボと俺の後ろをついて歩く大石を横目に、俺は彼女の首に掛かる先程の星の砂に視線を移した
遠目からでもキラキラと光っているのがわかるそれは今まで散々飽きるほど聞かされたアイツの平河への想いが詰まった小さな瓶。
大石はいつも肌身離さず持ち歩いていた…まるで形見のように。
「なァ…お前、その首に掛けた瓶のこと…貰った奴のこととか何も覚えてねェのかィ?」
慎重に言葉を選んだつもりだったが、その答えを聞くのが何故だか少し怖くて上手く言うことが出来なかった
しかし、そんな俺の気持ちとは反対に大石は至って平然と答える
『…よくわからない。
あ、でも綺麗だね!』
「…。」
あぁ、最低だな…俺。
そんなこと…聞かなくてもわかってたことなのに…
よりもよって
『…お兄…ちゃん?』
誰よりもアイツを忘れねェとしてた大石の口から言わせてしまった
「悪ぃ…」
『え?』
今まで平河のことに縛られるなと散々言ってきたのは俺の方だったのに、
彼女がこんな意図も簡単に野郎のことを忘れてしまったことに少しばかりの恐怖を感じた
その場に俯き、拳を握る
『…。』
すると不意に大石が俺の右手に触れた為、慌てて彼女に振り向いた
「おま…いきなり何しやがんでィ!」
『えっ…と、お兄ちゃんと手を繋ごうかなって…ごりらさんとはいつも繋いでるから』
「…」
言いながら笑う大石の手を少し強めに振りほどいて再び足を進める
『あ、お兄ちゃん!…』
「…繋がねェよ、…俺とお前は」
『…どうして?』
「どうしてもでィ!…それからそのお兄ちゃん呼びもやめろィ」
眉間に皺を寄せ前を歩く俺に大石は困ったように俯いた