第4章 占いは信じなくても当たる時は当たる・後沖田視点【星の砂⭐︎】
翌朝8時、俺は昨日の約束通り屯所の門の前で大石を待っているが、先程からその姿は一向に見えてこない
「遅ェ…」
まぁアイツのことだから時間通りに来るとはハナから思ってはいないが、さすがに今日はいつもの倍遅い。
痺れを切らした俺は大石の部屋に向かい、襖を勢いよく開けた
「オイ馬鹿女、いつまで寝てやがんでィ」
そのままお構い無しに部屋に入ると大石は布団にくるまって俺を見つめていた
『服…ない』
「はぁ?昨日まで着てた袴とかがあんだろィ」
『着れないもん…』
「着れないって何言って…」
すると次の瞬間、するりと布団から出て来た大石の姿に俺は目を大きく見開いた
また…小さくなってやがる…。
「オイお前…身体…」
『どうしよう…これじゃ外に行けないよ』
今にも泣き出しそうなその表情に俺は何故か胸が酷く痛むのを感じた
「どうなってんでィ…」
ほぼ下着ともいえる格好の大石に俺は自身の隊服の上着を着せ彼女の手を取った
「とりあえずこの事を近藤さんに説明しねェと…」
言いながら部屋を出ると突然大石が立ち止まり俺の腕を強く引っ張った
『ダメ!ごりらさん達には言わないで!』
「はぁ?何ででィ」
『だって昨日もたくさんお世話してくれたのに…また今日も迷惑なんてかけたくないもん!』
「てめぇ…人の心配してる場合かィ」
『とにかく絶対言っちゃだめ!お願い!!』
小さな手と弱い力で俺の腕を必死に掴む大石の姿に俺は呆れて溜息をついた
「ったくテメーって奴は…」
そして次の瞬間、今度は俺が反対の腕で彼女の腕を勢いよく掴んだ
「そんなんだから"お人好し"とか"雌豚"とか"低女子力"とかって言われんでさァ!」
『そんなの…い、言われたことないもん!』
「いつも言ってんでィ、俺が!!」
大石は少し頬を膨らませながら俺をキッと睨む
『お兄ちゃんは反対にごーいんで意地悪で全然優しくない!』
「当たり前でィ、何で俺がお前に優しくしなきゃならねェんだ」
俺の言葉に大石は黙ってその場に俯いた
『…私、意地悪なお兄ちゃんなんて嫌い』
「!」
そう小さく呟いた彼女の一言に
俺は一瞬、心臓が針で刺されたような感覚になった
「…」
ほんと…人の気も知らねェで。