第4章 占いは信じなくても当たる時は当たる・後沖田視点【星の砂⭐︎】
しばらくすると不意に大石が団子の串を置き、こちらに振り向いた
『ねぇ、お兄ちゃん』
「今度はなんでィ…」
『私は……どうして何も覚えてないのかな』
「…!」
そう言って俯く大石に俺は目を見開いて彼女を見つめた
『気がついたらここにいて…けど父上も母上もいないの。…でもここの人達はみんな私のこと知ってるみたい』
"私だけが何も知らない"
言いながら表情を曇らせる彼女に俺は何も答えてやることが出来なかった
どうして身体が縮んだのか、記憶がないのか…聞きたいのは俺の方だったのに
「俺にもわからねェよ…」
その答えは誰も知らない。
未だ悲しそうに俯く大石を横目に俺は食べかけのカレーをスプーンでつつきながら口を開いた
「なァ…明日、仕事で江戸の街巡回するけど…オメーも来るかィ?」
『…じゅんかい?』
「見回り、外歩くんでィ。街の景色とか見てたら…ひょっとすると何か思い出すかもしんねェだろィ?」
『…うん、行きたい!散歩!!』
「そーかィ…」
散歩って…。
俺の言葉に勢いよく頷き、再び団子に手を伸ばす大石を頬杖をつきながら見つめた
…本当に餓鬼みてェ。
こんなに小さくて性格もまるで子供なのに…
『約束だよ、お兄ちゃん』
たまに見せるその笑顔だけは
「おぅ…」
何一つ変わっていなかった。