第1章 恋の季節【空回り】
「いや…まぁあながち嘘でもねーけど、ちょっと盛りすぎた」
頭が追いついてない私に土方くんはゆっくり話し始めた
「総悟がよ、最近あまりにもしつこい女がいるっつーから、どんな奴かと思ってよ。」
『…』
「ま、総悟のこと好きになる女は過去にも大勢いたからな…だがどいつもこいつも好きっつーのは最初の言葉だけで本性がわかった途端幻滅して逃げていく女ばっかりさ…」
『…あ、だからさっき沖田のことをあんな風に…』
「まぁな…。あとは総悟が駄目なら俺にって奴もいたし、アンタがどの程度の奴なのかってちょっと試してたんだ」
『試す?』
「でもわかった…アンタが
正真正銘のバカってことがな」
『バ、バカ!?』
何なのこの人!人の恋心をバカにするなんて…。
「だってお前まず…俺と総悟親友じゃねーし」
『え、違うの?だってさっきずっと見てきたって…』
「幼なじみとしてな…別に親友ってわけじゃねーよ」
?…腐れ縁ってやつかな?
言葉では言い表せない関係…みたいな…?
『はっ!もしかして土方くんも沖田に恋を…』
「殺すぞ」
物凄い顔で睨まれたので慌てて机の下に隠れた
「ったく…変な奴だな」
『でも沖田のこと大切に思ってるんだよね』
「あ?」
『家族でもなくて親友でもないのにこうやって沖田のことを気にしてるってことは…やっぱり大事に思ってるってことだよ!』
「…好きに受け取れ」
『うん!』
私を見つめ溜息をつくと土方くんは鞄を背負い教室から出た
『あ、待ってッ!』
土方くんに続いて私も教室を出る
『そういえば土方くんは何で教室に?』
「部活で使うタオルを教室に置きっぱにしてたのを思い出してよ、練習前に取りに来たんだ」
『え、じゃあ今から剣道部の練習?』
「あぁ…5分程遅れちまったけどな…」
『…』
「観に来るか?」
『…え、いいの?』
「あぁ、騙した詫びだ」
『やったぁ!ありがとう土方』
「…」
『あ…ひ、土方くん』
「…いや土方でいい。んじゃ行こうぜ大石」
『…うん!』
もっと怖い人かと思ったけど、彼もとても優しい人だったんだなぁ。