第11章 電話越しの彼
『沖…た、沖田…』
携帯を持つ震える手を押さえ、必死に彼の名前を呼んだ
「…」
大丈夫…ちゃんと話せるから。
『あのね…今銀八会に来てるんだ。これから銀高で二次会なんだって。…』
「…」
電話の向こうで彼がどんな顔をしてるかなんてわからないけど…私は、ちゃんと私の気持ちを沖田に伝えるんだ。
『あの…ね、妙ちゃんも神楽ちゃんも、近藤くんや土方もみんな来てるよ!凄く盛り上がってて…』
久しぶりにみんなに会えて嬉しいはずなのに、楽しいはずなのに…。
「…」
『……けど、』
「…」
『私っ…は、
私は、沖田がいないと…楽しくないよ』
声が震える。
でもこれは全部私の本心だから…ちゃんと伝えたかった。
『私ね…沖田に話したいことがあるんだ』
「…話…?」
『うん…色々回り道しちゃったけど、今これだけは言えるよ』
「…」
『私ね…本当は今も…沖田がす…ギャッ』
言い終える前に突然誰かに携帯を奪われた
『ちょ、何す…!?』
言いながら振り向いた先にいたのは
「よォ、沖田。久しぶりだな」
「…!」
な、なんで
『「高杉!」』
突然目の前に現れた人物、そして電話に出た人物に驚いたのは私も沖田も同じだった
『高杉…』
「…オイ沖田、ブスが泣き面ぶら下げて益々ブスになってるぜ」
『ぶっ!?』
携帯を取り返そうと手を伸ばす私の頭を押さえつけながら高杉は沖田に向かって言った
「…お前が何考えてるかなんて知らねェがよ…」
「…」
「俺と2人きりにしたくねェなら早いとこ来ることだな…」
そう言って電話を切った彼と目が合う
『高杉…いつからここに?』
「…さっき」
『さっきって?』
「クラスの奴らが出て行く少し前」
『いや全然さっきじゃないじゃん!もっと早くに声かけてよ!』
「…掛けれるかよ…」
『…』
俯き、壁にもたれかかる彼はそう言って私から目を逸らした
「…ほらよ、携帯」
『あ…ありがとう』
当たり前のように高杉から返された携帯を受け取る
って!
『何切ってんのおおおお!!?』
受け取った携帯の画面は通話終了と表示されていて、沖田との電話は強制的に終わらされてしまっていた