第10章 緊急会議【歩視点】
とりあえず桜と沖田くんのことについては彼らに託すことにした。
彼らなら大丈夫だ、しっかりやってくれるに違いない。
俺は俺で家に帰り、桜とちゃんと話をすると決めた
いや、例え本当のことを話さなくてもいいんだ。
ただ桜には悩みがあっても、もう1人で抱え込まなくてもいいんだということをわかってほしい。
お前が悩みを打ち明けたいと思った時、隣でそれを聞いてやれる人間がここにいることを忘れないでいてほしいんだ。
だから俺はッ。
「ただいまー」
『あ、おかえりなさい歩兄』
「え…桜!」
家のドアを開け、最初に目に映ったその姿に俺は思わず素っ頓狂な声を出してしまった
『歩兄…今朝は酷いこと言ってごめんなさい。私…ちょっと…いやかなり落ち込んでて…八つ当たりしちゃった…』
「桜…お前…」
『私わかってるよ。歩兄、本当は私のことすごく心配してくれてたんだよね…それを私ったらウザイとかテンション高いんだよナルシストが!とか思っちゃって最低だった…』
あぁ、どうやらようやく俺の想いが通じたみたいだ。
今朝のことなんてもう忘れよう。桜は桜だ。
『それでね…その…お詫びとお礼を兼ねて晩御飯作ったから…良かったら食べてね』
そう言ってテーブルに並べられた美味そうな料理を見つめる
あぁ、やっぱり優しい。さすがは俺の妹!
全くこんな可愛い奴を泣かすなんて沖田あんちきしょーは何やってんだか。
『ねぇ歩兄、』
「ん?」
俺は席に座り桜が作ってくれた味噌汁に手をつける
『今日ね、妙ちゃんと神楽ちゃんから電話もらったんだ』
「うん…」
『それで…私のこと心配して訪ねて来たらしいんだ。
歩兄が』
俺は少し冷や汗を掻きながら味噌汁を啜る
『ねー歩兄、緊急会議ってなに?』
そう言って桜が満面の笑みを浮かべた次の瞬間、燃えるように辛い液体が喉を通り俺はそーっと意識が遠退いていくのを感じた
そう言えば何の話をしていたっけ?
あ、今回は何で俺がナレーションしてるかって話だったな。
それはきっと俺の出番がしばらくないからで間違いない。
兄弟(特に女)がいるみんなへ、これだけは肝に銘じておいてほしい。
例え兄妹間でも深入りするとろくな事にならない。