第8章 本音
目の前に突然現れた人物に反射的に身構える
『お、沖田何で…ここに!』
「それはこっちのセリフでィ。さっき中で不審な女がいるって騒がしかったんで、俺の知り合いじゃなければいいなーとか思って来てみたらお前だったんでィ」
『不審者扱いされてたの私!?』
お会計を済ませ500円が抜けた財布を見つめていると沖田が言った
「で、何しにきたんでィ」
『え…』
何しに来たって…。
『お、沖田に話したいことがあって…』
何だろう…この感じ。
「ふーん…それ、電話じゃ駄目だったのかィ?」
沖田の目が…冷たい
『あ…うん、何も連絡なしに来ちゃってごめんね…でもその…急ぎだったから…』
沖田はどこまで知ってるんだろう。
もしかして沖田がこうして私の目を見ないのは、高杉から全部聞いて知ってるから…?
高杉とキスしたこと…怒ってるのかも。
でもちゃんと言わなきゃ…自分の口から…ちゃんと!
『あのね沖田、私っ…』
「悪ィけど…今仕事中なんでィ。サボってるって思われちゃあ面倒なんでねェ」
『あ、そそそうだよね!こんなとこで話すことじゃないもんね!じゃああの…沖田のバイト終わるまでどこかで時間潰して待ってるよ』
「いや、今日は終わんのも遅ェし…あんま話す時間もねェから帰ってくだせェ」
『えっ…』
帰れって…せっかく来たのに
まだ会ったばっかりなのに
やっと…会えたのに
『…』
「…」
そうか…。
『ご、ごめんね…仕事の邪魔しちゃって…』
ずっと会いたいと思ってたのは…私だけなんだ…。
『私…帰るね…』
会えて凄く嬉しいのは私だけで
「…」
沖田は全然…嬉しくないんだ。
何も言わない沖田に私は勢いよく店を飛び出した
馬鹿みたいだ、私。
でも、本当はどこか自惚れてた
事実を知って沖田が怒ってくれるんじゃないかって、
嫉妬して会いに来てくれるんじゃないかって…どこか期待してる自分がいたんだ
- 帰ってくだせェ -
あんなの…今までにだってたくさんあったのに
なのに今は…苦しくて仕方ない。
『うっ…ひっぐ…』
溢れる涙を手で拭いながら歩いていると突然前方から走って来た女の人とぶつかってしまった
「っ!」
『あ、す、すみません…大丈夫ですか?』
すぐ様立ち上がり言いながら手を差し伸べ私は目を見開いた