第3章 好きな人
場所はかぶき町、公園前。
提灯の明かりに照らされ多くの屋台が並び賑わう大通りに、浴衣姿の私はさっきから落ち着きなく立っている。
そう、沖田に夏祭りデートに誘われたあの日から2週間!ついにその日がやってきたのだ!!
感激しながら、ふと公園の時計に目を向けた
『ちょっと早く来すぎたかな…』
待ち合わせまであと10分くらいあるけど早めに来て待っとくっていうのも何か彼女っぽい!
そう、例えば…
「わり、待ったかィ?」
『ううん。今来たところだよ!』
「そっか…良かった」
『それに…沖田を待ってる時間も…好きだから///』
「吉野…」
『沖田…』
『とかなんとかなっちゃったりしてーっ!!』
一人騒ぐ私を道行く人が冷めた目で見てたけど気にしない。
それにしても…見事にカップルだらけだなぁ。。
まぁ…お祭りだからね…みんな好きな人と行きたいよね。
私もずっと沖田とって夢見てきたから…
それが今日現実になるなんてまだ信じられない。
『あっ…』
ふと私の目に手を繋ぎ、幸せそうに歩く浴衣姿の男女の姿が映った
恋人繋ぎ…いいなぁ。
私も沖田と繋ぎたい…なんて言ったら嫌がられそうだなぁ…
「吉野!」
名前を呼ばれ振り向くとそこには浴衣姿の沖田がいて、驚きのあまり用意していた台詞も全部どこかへ飛んでってしまった
『お、お、おき…!』
「…待ったかィ?」
『ぜ、ざぜ!だ、大丈…ぶ』
「どうみても大丈夫じゃねーだろィ、なんでィその吃り方」
『い、いやぁ沖田が浴衣で来ると思わなかったから…ちょっとびっくりしちゃって…』
「…オメーが着て来いって言ったんだろーが」
『あれ、そうだっけ?』
「…お前も浴衣…似合ってる」
『あ、ありがと…う』
挙動不審な動きをする私をみて沖田は溜息をついた
あぁ…呆れられちゃったかな。
本当はもっと余裕な感じで言いたかったけど… どっかの少女漫画のように上手くはいかないな…。
でも沖田の浴衣姿も見れたし…
『吉野桜、生涯に一片の悔いなし!!』
勢いよくガッツポーズを決める私に沖田はまたしても私を不審な目で見つめた
そして「バカだねィ」と言って私の頭をくしゃくしゃと撫でた
果たしてこのデート、最後まで私の心臓がもつだろうか。