第12章 大切なもの【沖田視点】
「じゃあそーちゃん、私明日朝から出張だからもう寝るわね」
「あ、はい。おやすみなさい姉上!」
「おやすみなさい」
そう言って部屋から出て行く姉上から目線を時計に移す
やっべぇ…もう10時まわってんじゃねェか。
飯食って即寝とかどんだけ疲れてんでィ俺。
ふと、傍にあったリモコンを手に取り何気なくテレビをつける
[それでは、明日のお天気情報です!]
「…」
[明日は午前中は晴れますが、午後からは次第に雲に覆われ夜には雨となるでしょう。外出時は傘をお忘れなく!]
…雨か…、雨に良い思い出なんて1つもねーな。
明日銀八会へ行ったところでこの気持ちが晴れるわけでもねェし…。
会って余計に苦しい思いをするくらいなら…最初から行かないほうがいいのかもしれない。
「そーちゃん」
「!」
てっきりもう寝に入ったとばかり思っていた姉上の声に俺は驚きのあまりソファから滑り落ちた
「あ、姉上…どうしたんですかィ?」
「…あのねそーちゃん、その…桜ちゃんと別れたって本当?」
「え…」
突然の言葉に俺は思わず手に持っていたリモコンを床に落としてしまった
「あっ…」
慌ててリモコンを拾い姉上を見つめると、少し切なそうに俯いていた
「…十四郎さんに聞いたの。2人とも前はあんなに仲が良かったのに…私信じられなくて」
「…本当ですよ」
俺の言葉に姉上は目を大きく見開いた
「それは…桜ちゃんから?」
「…まぁ、お互いに不満を持ってたってとこですかねィ」
「そーちゃんも…桜ちゃんに不満があったの?」
「そりゃ…吉野ですぜィ?出逢った時から不満だらけでさァ」
薄ら笑いを浮かべる俺を見つめ、姉上はただ黙って俯いていた
「姉上…そんな顔しねェでくだせェ。確かに姉上はアイツのこと気に入ってたみたいだし、アイツも姉上のこと好いてやしたけど…」
ただ俺が…もう会いたくないんだ。
「俺は…もうアイツとは会わねェつもりです」
顔を見るから心が揺れるんだ。
傍にいるから離れ難くなっちまうんだ。
ならいっその事、俺自ら離れていってやる。
そうしたら今度こそ、
- 沖田っ! -
アイツの顔も
- 大好きッ! -
その声も姿も
忘れることが出来るはずだ。
ズキッ
この胸の痛みもそのうち無くなる。