第12章 大切なもの【沖田視点】
- 別れよう、私達 -
あの日、桜と別れてから2週間が経った
それまでの俺は出来るだけあいつの事を考えないようにし、普段と何一つ変わらない生活を送っていた
「総悟、お前…明日だってこと忘れてねェよな」
「銀八会だろ…わかってらァ」
部活の休憩中、俺の隣に腰を下ろした土方を睨みつける
「…荒れてんな」
「…荒れてねェですよ」
「いや、ここ最近の部活の成績も落ちてやがるし、話しかけてくる奴には全員敵意剥き出しだ。…まるで吉野と出逢う前に戻ったみてェにな」
「…」
「…ま、その原因も大方吉野のことだろうがな」
チッ…土方のくせにわかったようなこと言いやがって。
だが実際、ここ最近のあらゆる事に対して集中力に欠けているのは自分でもよくわかる。
どうしようもない脱力感と…
何か大切なものを失ったような喪失感。
「吉野のこと…ほんとにもういいのかよ」
「……だから言ってるじゃねェですかィ、俺達は終わったんだって」
そう、俺はもうアイツとは関係ないんだって
「…」
今までだって何度もそう言い聞かせ、忘れようとしてきた
なのに
- 沖田っ!! -
何でこんなにもアイツの顔が頭から離れない…?
「…無理してんな」
そう一言だけ呟くと土方さんは腰を上げ、再び道場へ戻って行った
「…無理って何だよ」
- 別れよう、私達 -
今思えばあの時の俺は、喧嘩した勢いで"別れる"なんて言葉をつい口にしちまっただけなのかもしれねェが…
あいつは
あいつの言葉は…本心だったんだろうか。
いや、本心じゃねェなら今頃こんなことにはなってねーか。
「総悟、休憩は終ェだ。次ザキの相手してやれ」
「へーィ」
俺達は終わったんだ。
「沖田さん、よろしくお願いします!」
なのに何で俺はまだ、あいつの事考えてんだ
あいつからは何も無いのに…これじゃまるで俺だけがまだアイツを好きみてェじゃねーか。
違う、俺はもう…。
「クソ…ムカつく!!」
次の瞬間、勢い良く振り下ろした竹刀は見事に山崎の股の間の床に穴を開けた
「ぎゃぁああ!!沖田さんの殺気が半端じゃないんですけどォ!?」
「総悟テメッ、道場壊すなァァァ!!」
もう桜なんて…好きでも何でもねェんだから。