第16章 二人だけの花火
[沖田side]
『ッ!ずるいよ沖田…なんでそんな急に優しくするの…いつも私ばっか振り回されてバカみたいじゃん…』
「お前も人のこと言えねェだろィ…バカのくせに俺をこんなに振り回しやがってバカのくせに」
『バカって2回言った!?』
さっきまでの吉野の泣きっ面は何処かへ消えていて、いつもの俺たちに戻っていた
『…花火、終わっちゃったね』
俺から少し離れて空を見上げた吉野の顔が少し寂しそうだった
『でも、来年は…一緒に行けたらいいね』
そう遠慮がちに笑う吉野
「…どうだろうねィ」
『えぇっ!』
「来年っつったらもう大学生だろィ?お前も俺のことなんか忘れてるかもしんねーし」
『そ、そんなことあるわけないじゃん!私は沖田のことずっと好きでいるもん』
…よく言うぜィ。
「さあなー、なんせ人が一大決心して言った言葉もスルーする奴だからなァお前は」
『え、何言ったの沖田』
「…」
やっぱわかってなかったのかよ。
「もうだるいお前、帰る」
『え、ちょっと待って!』
そう言って俺の腕を掴む吉野
「…なんだよ」
『…その…あのね、私』
頬を染めて俯く姿に自然と鼓動が跳ね上がった
『私、沖田と…』
俺と…?
『今から花火したいんだけど!!手持ちの!』
「…一人でやっとけィ、帰る」
『何でぇええ!!?』