第12章 聞きたいこと
こちらには気づいていないらしい
でも珍しいな…一人で食べてるなんて。
いつもは近藤君や土方たちと一緒なのに。
不思議に思って少し彼の様子を見ていると、勢いよく風が吹いて沖田の髪が靡いた
同時に手すりの上に肘をつき溜息をついて遠くを眺める
ていうか、今の姿もなかなか
『かっこいい…』
「オイ早く消えろ、変態がうつる」
高杉はシッシッと私を手で遇った
いや、そりゃあもう今すぐにでもあの背中に飛び付きたいけど、もう少し見ていたいような気もする…。
ぼーっと見つめているとまた子が背後から私の肩に手を置いた
「桜ってあんなのがタイプなんスか。童顔だし頼りなさそうじゃないッスか?」
『え?』
「やっぱいい男ってのは晋助さまみたいなミステリアスで一匹狼のような人のことを言うんスよ!」
カチン
『はぁ!?沖田はね、成績だって良いし、剣道の腕だって部内1位なんだから!爽やかだしたまにツンツンしてるけど凄いんだから!すっごくかっこいいんだから!!』
「ツンツンっていうかアンタに対してだけッスよ、あんな冷たい態度してるのは!晋助さまのほうがいい男!」
『いーや!沖田』
「晋助さま!」
ギャーギャーと言い合いになっていると高杉が私の肩を叩いた
『何!?』
またまた沖田の方を指差す彼
なんと、沖田がこっちを見ていたのだ
同時に目が合ったので笑顔で手を振ると彼は顔を引き攣らせた
小走りで沖田の方へ行く
『な、何してるの?』
「見たらわかるだろィばか」
沖田は私と顔を合わせようとせず、ひたすらパンを口に運んでいた
『…なに食べてるの?』
「…焼きそばパン」
『あー!それ今日50円だったよね!私も並んだんだけどお財布を持ってないことに気づいて…』
ぐ~
『…』
さ、最悪だ!
今の絶対聞かれたよね!?
やばい恥ずかしい!!
『き、きこえた?』
「…何がでィ」
『あ、ううん!何でもない』
よかった…。聞こえてなかった。
ホッと胸を撫で下ろす
「でっけー腹の音だなァ」
「どんだけお腹すいてんスか」
『いやなんであんたら聞こえてんだァァァ!!?』