第9章 勉強会
『…』
「…」
どうしてこうなった!!
『…』
すっごく気まずいんですけど!
そもそも私は沖田と二人きりだと緊張するからみんなを呼んだのに何で気を遣われて二人きりにさせられてんの!?
ちらっと沖田を見ると彼も少し頬を赤く染めていて、何だかバツが悪そうな顔をしていた
…あれ、頬が赤い?
な、なんで沖田まで赤くなってんの!?
やめて!可愛いけどうつるからやめてっ!
一人で何かと葛藤していると沖田が口を開いた
「オイ…」
『えっ?』
「…勉強、しねーのかよ」
少し照れ臭そうに言いながら私を見上げた
『え…い、いいの?』
遠慮がちに聞くと彼はあーもぅ!と頭をくしゃくしゃと掻いて顔を机に伏せた
「察しろよな鈍感…」
『へ?』
"鈍感"とは私のことだろうか?
ていうか何だか今日は沖田の言動といい行動といい、色々贅沢過ぎるものを見ている気がする
「オイ吉野、ここわかんねーんだけど」
『え?』
「これどうやって訳すんですかィ?」
お、沖田が私を頼ってる!?
『えっ…な、何で…』
「オメェ、英語得意なんだろィ?」
『ま、まぁ…』
「んじゃあ教えろィ、俺は数学教えてやるから」
神様…こんなことっていいんですか。
「で、どーやんでィこれ」
『えっと、まずここが主語だからこっちから訳して~…』
私が説明すると沖田は理解してくれたようでスラスラと問題を解いていた
教え方わかりにくくなかったかな…。
私といえば、先程までの沖田との距離にドキドキして未だに心臓の音を隠すのに必死だ
『沖田って、英語苦手だったんだね。知らなかったよ』
「まあなー…」
沖田は私の言葉に反応しつつひたすら問題を解いている
『私ね、沖田のことなら何でも知ってるつもりだったんだ。…好きな食べ物とか部活とか友達とかいつもサボる教科や遅刻や補習とか…』
「後半ほぼ悪口だろィそれ」
『でも、こうやって沖田といるとまだまだ私の知らないこと…たくさんあるんだなって思ったの』
私は沖田を見て微笑んだ
『何か嬉しいよね、こういうの!』
一瞬目見開いた沖田は持っていたシャーペンを置いて呟いた
「あたりめェだろィ…」
『え?』
沖田の真剣な瞳が私を捉える
「お前はまだ…全然俺のことわかってねーよ」
『え…』
それって…どういう。