第9章 勉強会
[沖田side]
何か思い出したかのように次々とみんな帰っていく
俺も帰るか、と思って立ち上がったとき姐さんに止められた
「沖田くんはもう少し残って桜ちゃんに勉強教えてあげて」
「「はぁああ!?」」
俺と吉野は見事にハモった
姐さんに説得(脅)され吉野の部屋に残ることになってしまった
俺と吉野の2人しかいなくなった部屋で気まずい空気が流れる
さっきから吉野は百面相をしているが正直、俺も動揺していたりする
そりゃあ、テメェの好きな女と二人きりで動揺しねぇ男はいねェだろィ?
彼女からは何も話そうとしないので俺から口を開いた
「…勉強、しねーのかよ」
『へ?い、いいの?』
そう言って真っ赤な顔で俺をみる吉野
やべぇ…。こいつの顔まともに見れねー…
俺は顔をそのまま机に伏せた
…ったくいちいち聞くなってんでィ。
「察しろよな鈍感…」
『へ?』
こいつの表情一つ一つに俺の心は揺れる
気を紛らわす為、適当に英語の教科書を開いた
あ、そーいやここわかんなかったから飛ばしたんだった。
「吉野、ここどうやって訳すんですかィ?」
『えっ…な、何で…』
分かりやすいくらい顔を真っ赤にするこいつに少し吹きそうになった
「オメェ、英語得意なんだろィ?」
自信なさそうに吉野は頷くが英語に関してはこいつは出来る方だ
そして案の定こいつの教え方はわかりやすかった
黙々と問題を解いている俺を見て吉野はフフっと笑った
『沖田って、英語苦手だったんだね、知らなかったよ』
少し勝ち誇ったように言う彼女の言葉に適当に反応する
『私ね、沖田のことなら何でも知ってるつもりだったんだ。…好きな食べ物とか部活とか友達とかいつもサボる教科や遅刻や補習とか…』
おい、どんな情報でィ…。
「でも、こうやって沖田といるとまだまだ私の知らないことたくさんあるんだなって思ったの』
『何か嬉しいよね、こういうの!』
俺のほうを向いて優しく笑うその顔が俺の心臓をぎゅうっと締め付けた
気づくと俺は彼女の顔に近づき、真っ直ぐその目を見つめた
「お前はまだ…全然俺のことわかってねーよ」
はやく気づけよ、俺の気持ちに。