第1章 目覚め
「んーっ、あー…もう朝なのか」
仄暗い外を見て、今日が推薦入試な事を思い知らされた。
試験内容とか聞いてない。
待って待って。場所何処かすらわかってないのだが。
スマホを見ると、ご丁寧なことに記憶が戻ってなかった時の僕はリマインダーを設定してくれていた。
時間的には間に合うかな。
「よし、受験が終わったら横浜に行こう」
僕が此処に居ると云うんだから、他の皆も来ている筈なんだ。
静岡と横浜は正反対だけど、とにかく行くしかないよ。
「あ、轟、くん」
受験会場に着いたら見覚えのある(記憶の中に存在する)男子を見つけた。
いつも険しい顔をしている子で、笑った所を見た事がない。(記憶がそう云っている)
「誠人、か?」
「うん」
えっ、と、轟くんって、僕の事名前で呼ぶ人だっけ、?
記憶の中では何時も何考えているか分からない、怖めの男の子なんだが。そして僕の事は、東条としか呼ばなかったんだが。
「お前も推薦組だったのか…?」
そうだった。彼別に他人の事どうでも良い人間だった。
乱歩さんと一緒のタイプか。
一緒に説明受けたじゃないかと云いたかったが、それは別に僕じゃないし。僕であって僕では無い人だったから。
「そうだよ。轟くんもなんだね」
誰か僕の心情察してくれ。
今多分心の中はパニックさ。
「…お互い、頑張ろうな」
いやいやいやいや。そんな事云う伽羅じゃないでしょ君。
何かあったの。虹色のゾウリムシ見えてない?大丈夫?
「うん。ありがとう」
笑顔を向けたら顔背けられた。なんで。