第1章 サインの秘密
「う〜ん……」
「おらふくん、まだ考えてたのか」
「だってさぁ、こんなこと考えたことなかったんやもん」
ここはMENの家。おらふくんはMENに相談事があると家に来て会社から配られたパット端末と睨めっこしていた。
「俺のところに来て書けるもんでもないだろ」
とMENは言いながらおらふくんにお茶を出す。おらふくんはそんなことないと首を振った。
「好きな人のところにおったら書けるかも分からんよ?」
「あのなぁ……」
MENは言いかけて口をつぐむ。この男、こうも簡単に口説き文句を使ってきてこちらを困らせるばかりだ。そんな裏表のないおらふくんだからこそ好感が持てるのだが。否、もう恋人なのだが。
「MENはもう出来たんよね?」
まぁな、とMENは答えておらふくんの手元を覗き込む。そこには色々なデザインをしたおらふくんのサインがぐちゃぐちゃと書かれていた。おらふくんはこういう細かい作業が苦手みたいだ。デザイナーにいくつか案をもらっているみたいだが、どうも気に入ったサインを上手く書けずに苦労しているらしい。