第5章 おらふさんの守護霊
次に向かったのは「おらふ」さんの家だ。おらふさんは出会って早々私と目を合わせて気さくに挨拶をしてくれたところ、人懐っこさが表れている気がした。
いつもニコニコしている彼には、不思議なことに守護霊がいない。ちょっと気が休まったのもあり、私も自然と笑顔になると、先輩が意味深にこちらに視線を向けた。
また何か勘違いされていそうな気がしたのだが、まぁ気にしなかったことにして機械メンテナンスに意識を向ける。ここでようやく、落ち着いて先輩の話が聞けてうんうんと頷いていると、さらに隣でおらふさんが並んで聞いていたからびっくりした。え、何してんの?
「僕も話聞いてみたいなって思って」
関西訛りの発言に私は新鮮さを覚えながら、彼の愛嬌のよさに心が打たれる。この人本当に、成人男性だろうか。
「ニャーン」
直後、鳴き声が聞こえて振り向くと猫が歩いてやって来ていた。むぎ、と名前を呼んで白と茶色の猫の方へ歩いて行った。
私はそこで気がついた。彼に守護霊がいないのは、この猫がいるからだ。ペットがいる人のところに守護霊がいないのはよくあることで、大事にしていればいる程、ペットが守護霊のような力を発揮するみたいだった。恐らく、この猫ちゃんがおらふさんの永遠の守護霊になるのだろう。
その後、機械メンテナンスを終えて車に戻ると、先輩が早速からかってきた。君の好みはおらふくんタイプだったのかって。
「なんか弟を思い出しちゃって」
私は半笑いでなんとかそれらしいことを言って何か聞かれるのを阻止した。弟がいるのは確かだが、あんなに可愛かった覚えはない。
へぇ、弟がいるんだ。先輩の話は私の兄弟の話へと転じ、守護霊の話は一切しないまま、最後のゲーム実況者さんの家へ向かった。