第4章 おんりーさんの守護霊?
「次行くおんりーさんのところはね、非常にファンの多い人なんだよね〜」
先輩はおんりーさんの家に向かいながらそう説明してくれた。
それを聞いた瞬間、私はあることを思い出して嫌な予感がした。
というのは、私が前に推していたアイドルのライブにようやく見に行けた日、見えたのである。複数の女性たちが入れ替わり立ち替わり取り憑いてるのが。
それは皆生き霊たちであり、ファンがあまりにもアイドルのことを好き過ぎて無意識下に恨みのように飛ばしてしまうらしい。なので少しでも近づこうものならば嫉妬が私に取り憑こうとしてくるのでその場にいられなくなって私はそのアイドルを推さなくなった。
そして、おんりーさんの家に到着した。予想は的中し、おんりーさんの周りにもそういう類の守護霊……否、生き霊たちが大量にいては消えてを繰り返していた。いるのは女性ばかりのように見える。これは独占欲と嫉妬の塊のような守護霊だろう。ドズルさん夫婦に纏っていた穏やかな守護霊ではない。さらに私は女であることから、近づくなというアピールなのか、こちらに手を伸ばしてくる霊もいる。私はよく持ち歩いている珠々を握り締めた。
「うん、ここも大丈夫だね」
おんりーさんの機械メンテナンスもなにごともなく終わり、車へと戻る。私は平気なつもりだったのだが、先輩に大丈夫? と訊かれてしまった。
「いえ、大丈夫です……」
今更守護霊が見えるなんて言っても信じてもらえないだろうし、と思っていたのだが、何を勘違いしたのか、先輩が軽く笑いながら車を発進させた。
「可愛い子でちょっと緊張したんでしょ」と先輩は言う。「あの子一番人気なんだけど、見た目も可愛いから男女関係なく惚れちゃう男だよな〜!」
「え……」
まぁ確かに可愛かった。喋り方も動作も細かくしなやかで私より女性らしい。
本当ならアイドルでもやっていたんだろうな、という見た目だったのだが、だからこそあんなに守護霊が取り憑いてるのだと思うと素直に頷けなかった。私は濁し笑いを返して次の家へ向かった。