第8章 ぼんじゅうるさんの守護霊の正体
私は曖昧な返事をしてしまった。役者。それはどうもこの強面守護霊とは結びつかない。もしかして、強面役者と関わりがあったのだろうか。
「だからか俺、声デカいって言われんだけど、嫌だった?」
「あ、いえいえ、そんなことはないんですけど……」
その守護霊は誰ですか? なんて口が裂けても言えない。私はぼんじゅうるさんから目を逸らしながら、なんとか言い訳を探した。
「その、あまり皆さんの動画とか見たことなくて……ぼんじゅうるさんのことについてもっと知れるような動画って何かあります?」
本人を前にして動画について聞こうとする私。今思えばめちゃくちゃ失礼だったと思う。
しかし、ぼんじゅうるさんはケロッとした顔でそうなんだと言い、自分のチャンネルにこういうの出してるんだと動画や配信アーカイブを見せてくれた。あれ、先輩に教えてもらったのはブロック世界のゲームだったんだけども、見たことのないゲームタイトルも出ている。
「これは……」
「これは格ゲー。最近ハマってて」
世間に疎過ぎる私に嫌がりもせず説明してくれるぼんじゅうるさん。この人めちゃくちゃ優男だ。ゲーム内でイタズラばかりしても許されるのはこういう一面があるからだろうか。
「今度見てくれたら嬉しいんだけど、無理にとは言わないから」
「いえいえ、見ますよ!」
スタッフの一員ですから、と付け加えると、ぼんじゅうるさんははにかんだように笑った。
「今度は仕事以外で遊びに来てもいいのよ?」
「え」
「あ〜、冗談冗談。今日はありがとね」
本当に冗談か分からないまま、追い出されるように私はぼんじゅうるさんの家を出た。
やはり、メカニック担当臨時スタッフとはいえ、女一人で男性の部屋に上がるのはマズかっただろうか。
私はその後、会社に戻って上司に解決したと報告に行き、残っていた仕事を片付けて定時退社。
食事の合間に少しだけ目を通したぼんじゅうるさんの格ゲーの配信アーカイブを見て私は守護霊の正体をようやくここで知った。
「ゲームキャラクターが守護霊なんだ……」
それは初めてのことだった。そんなことがあるなんて思ってもいなかったし。
今度調べてみないと。ゲームキャラクターが守護霊の場合の意味合い。
私はここで初めてぼんじゅうるさんを受け入れられた気がして、夜はぐっすりと眠りにつけた。