第6章 クッキーとゼリー
「ほ、本当に入ってもいいんだな!?」
「下心がないのならどうぞって言ってるでしょ」
寮の部屋の前までついてきたくせに、今更何を躊躇うの?
「下心はあるけど隠す!今日の俺は紳士だ!」
「その手は何?」
五条くんは両手で空気を揉むように握っては閉じ、握っては閉じを繰り返している。
「こんなに進展すると思わなかったんだよ…っ、まさか寧々自ら部屋に招くとか…っ」
変態なのは隠せていない様子で、興奮をあらわにする五条くん。
過去を打ち明けてしまおうかとも血迷ったけど、やめておいた方が良さそうね。
今じゃ…ない。
いつか「次」があれば、五条くんに話した「寧々」
「俺…寧々に謝らなきゃいけねぇ」
「…なに?」
部屋に案内して、ローテーブル横のクッションに腰を下ろした五条くんは、神妙な面持ちで答えた。
「硝子と歌姫に寧々を泣かせるなって言われてたのに、泣かせちゃったな、悪ぃ」
「五条くんのせいじゃないから」
頬に張り付く涙の跡がヒリリと痛んだ。