第10章 知らない女の子と五条くん
「店員さん、来てるから」
「「あ」」
五条くんの後ろに立つ人影に目を配ると、なんとも気まずそうな表情の店員さんが立っていた。
先ほどまでは窮地を救うような、流れを変えるようなタイミングで訪れていたのに。
い、今のタイミングでは望んではいなかった…と申し訳なくも思ってしまう。
「お、お客様、デザートをお待ちしてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。すみません、お願いします」
隣に座る硝子はとっくに食べ終えていて、真向かいの五条くんも残りわずかの付け合わせを平らげた。
急かされるように私も急いでお皿を綺麗にして、店員さんは少し待って全員分のお皿を下げてくれた。
さっき…知らない女の子が五条くんに話しかけて来た時に、視線が五条くんだけに注がれていたと思った事は記憶に新しい。
周りの外野には目もくれず、好きな人だけを熱く見つめる眼差し。
まさかとは思うけど、私も同じような視界に固定されていた…なんてことあるのからしね。
「寧々、俺のこと見つめすぎ。そんなにカッコいい?」
「ナルシストね、五条くん」
つい、言ってしまったわ。