第10章 知らない女の子と五条くん
「五条…って言いたいところだけどさ、人の気持ちなんてワガママとエゴで出来てるんだから、誰も悪くないんだよ」
顰めていた眉を悲しげに歪める硝子は、伏目がちになりながら残っていたブラックコーヒーを一気に煽った。
「反転させればみんな悪いってこと。あ、私以外ね」
硝子は右手の人差し指でひゅーっと宙をなぞった。
そして投げ出すようにひょいっと指を放る。
「硝子…?」
「説明ないと分かんない?意外とセンスないね、寧々。まっ、五条は分かんなくて当然だけど」
「最強の俺に分かんないことなんて無いんだよね」
跳ねっ返りの強い五条くんは語気を強めて、硝子に真っ向から反論した。
「実際分かってなかったけどなぁ。寧々の反応を見るに五条の対応は間違ってたよ」
「……。」
呆気なく推し黙る五条くんに硝子は続ける。
「話しかけられた時点で、五条が彼女と来てるからって遮ればこんなにもつれることはなかっただろうし。まっ、寧々の爆弾発言が聞けたから、私としては悪くなかったかな」