第8章 違う人と任務
「ところで寧々に怪我させてねーよな?」
「もちろんだよ。ね、寧々ちゃん」
「どこも異常ないわ」
夏油くんはいつのまにか呪霊を全て引っ込めていた。
兎にも角にも夏油くんの足を引っ張らなくて良かった。
怪我をしなかったことよりも、足手纏いにならなかったことに安堵する。
「…で、悟が持ってるのが本物の大鯰の髭ってわけ?」
「よく分かんねぇけど、そうなんじゃね」
「テキトーね」
捻った弟の方から回収した呪物は、五条くんの手のひらに収まるほど小さかった。
「こっちのレプリカもそうだけど、地震を引き起こした大ナマズのヒゲにしては小さいね」
夏油くんは自分の手に持ったレプリカと、五条くんの手にある本物を見比べた。
「古いやつだし、パキッと割れたんじゃねぇの?」
「割れたような断面には見えないわよ」
「いやいや、割れるっしょ。だってこんな細いもん…あ」
「あ」「え」
五条くんが軽く握り潰すフリをしてみると、その一瞬で最も簡単に2つに折れた。
「悟、何で割ったんだい?」
「五条くん…?そんなことして大丈夫なの…?」
回収要請のかかった呪物を真っ二つにするなんて…。