第7章 夏休みといえば
パラパラと飼料を振り落とすと、我先にと食べにきたのは五条くんが掬った、通称ボス。
他の金魚に分けることなく全てを食べ尽くした。
「五条くんに似て食い意地が張ってるのね」
「黒いやつは辛うじておこぼれ食えてたけど、小さいのはダメだな。争う意志もねぇ」
確かに私が掬った子は一際小さくて、ボスや黒い金魚と比べると力では劣る。
それでも他の2匹がお腹いっぱいになった頃、ようやく餌を食べ始めた。
「辛抱強いのね。早く大きくなって、強くなりましょうね」
どうも幼い日の自分に重ねてしまって。
この子は何としても守らねばならないと思う。
他2匹も元気に過ごしてくれたら、それでいい。
途中、お手洗いに起きた寮母さんに飼育の許可を貰った。
晴れて今日からこの子達は寮付きのペットになる。
五条家というバックボーンを受けた、幸運な…ね。
「……ん、さすがに眠いな」
「もう午前1時を過ぎてるものね。五条くん、お手伝いありがとう。それから浴衣も…洗って返すわ」