第7章 夏休みといえば
「楽しい思い出」になると思ったのに…!
五条くんのセクハラ発言を思い出に入れ込むつもりはないのよ…!
「あれ、寧々怒ってんの?」
「見たら分かるでしょ」
こんなあからさまに不満を顔に出すことなんて珍しいのよ。
水無月家で顔色を窺って怯えながら生きてきた私が。
五条くんの前では不思議と素の自分で……、飾らない自分でいられる。
「どうやったら機嫌直るの?現金?現ナマ?」
「実質一択じゃない」
金銭や物で釣ろうとするのもどうかと思うけど…今日は釣られてあげてもいいと思える。
「そうね…チョコバナナを買ってきてくれたら……直るかもしれないわ」
直るかも、ね。
あくまで可能性の話。
甘いものでご機嫌取り…なんて定石でしょう?
「バナナとか卑猥「かき氷!!!!」
そんなつもりはなかったのに、五条くんのせいで…!
「と、とにかく甘いものが食べたいの…!」
「分かったよ。寧々は甘いもんは別腹だもんな。買ってくるわ」
「そんなに沢山はいらないからね」
さっきまでの五条くんの買い物の仕方を見てると、ブラックホールがないと消化できない量を買ってきそうだから。