第6章 クッキーとゼリー
「俺のこと心配してくれてんの?大丈夫だって、痛かったけどな」
五条くんは枕を受け止めた顔面をさすりながら、私に近付いた。
「謝罪はいらないから、ゼリーよこせ」
「あっ、謝らないし、あげないわよっ」
枕を投げ付けたことは悪いとは思いつつ、正当防衛だと思えば妥当でしょう?
「あっ!寧々!UFOだ!」
五条くんは、少しだけ明るくなり始めた窓の外を勢いよく指さした。
「そんな浅はかな手に乗るとでも?」
「ふふんっ、もーらい!」
そして…呆れて窓の方なんか見ずに、彼の顔を凝視したままの私から……スプーンを掠め取った。
「ちょっと!」
「ほらよ寧々、口開けろ」
これでもかと言わんばかりにゼリーをごっそりと掬い、私の前に見せびらかす。
今にもスプーンからこぼれ落ちそうなほど、不安定に揺れるゼリーと五条くんを交互に見つめながら
「五条くんは自分で食べるのが条件よ」
そう言って食べようとした瞬間
「それは飲めねぇな」
言葉とは真逆に、スプーンいっぱいのゼリーを自分の口に流し込んだ。