第6章 夏組 『始動!』
今日、夏組のオーディションをするらしい。
本当は私もオーディションを見てみたかったんだけど仕事だから難しかった。
私たちは朝ごはんを食べながら話す。
「5人集まらなきゃなんだよね?」
「そう。でも2人スカウトしておいたんだ。…来てくれるかな?あの2人」
いづみは少し首を傾げながら呟く。
私には誰か検討もつかなくて曖昧に頷いた。
仕事を終えて寮に帰ると談話室から賑やかな声が聞こえる。何だか聞きなれない声も。
私は盛り上がっているのを邪魔したくなくて談話室の扉を少しだけ開いて覗いてみる。
4人の初めてみる顔の子達がいる。…比較的若いように見える。
ぼーっと考えながら見ていると1人の男の子が私に気づいたようで近づいてくる。
「だれだれ〜?…え、超かわいー!」
ずいっと近づいてくる男の子に圧倒されて後ろに仰け反ってしまった私と男の子の間にいづみが入ってきてくれた。
「はいはい、皆。雨国の紹介するね」
そう言うと皆は私のことを見る。私は何故かすごく緊張して背筋を伸ばす。
「私の幼なじみの雨国。雨国もこの寮に住んでるんだよ」
いづみが私の横に来て皆の名前を1人1人教えてくれた。幸くんは私を少し見てからいづみを見る。
「…この人も演者?」
私は慌てて首を横に振った。
「ううん。仕事の合間に色々手伝いしてる感じかな。ご飯の用意したり」
「それと、雨国は私と一緒に演技の助言をくれたりもするから」
私の説明にいづみが補足する。
すると天馬くんは少し安堵したように私を見た。
「雨国さんは演技の経験があるのか?」
「演技の経験っていうか…、…中高は、近所で…、趣味程度にはしてたかな?」
私の返事に天馬くんはガクッと肩を落とす。私はつい苦笑いしながら天馬くんを見つめた。
「不安?…大丈夫だよ。演劇初心者でもいづみがいるからね」
そう言うと幸くんが少し吹きだす。天馬くんはそんな幸くんに怒りながらも私を見てくる。
「…俺の事知らないのか?」
私はポカンとしながら天馬くんの顔を見つめる。どこかで会ったのかと首を傾げていると幸くんが私の方を見た。
「俺も知らないから大丈夫」
「…っ!お前なあ」
天馬くんは幸くんに近づいた。