第4章 春組『初めての舞台』
いよいよ千秋楽が始まる。
私は今日の公演は気が気でない。
今更いづみに言っておいた方が良かったのかとか悶々としながら見ていると3幕、至さんが出てくるシーンになる。
ここで倒れる…のに。
倒れるのを忘れている?
足に集中しすぎて飛んだんだ。
お客さん達もヒソヒソと話している。
「この前と展開違くない?」
見える。春組皆の顔が少し強ばっている。
私は焦りで手を握りしめた。
「やめろ!ティボルト!!」
駄目かも、と思った時咲也くんが即興を続ける。
…咲也くん、凄い成長したな。
皆も咲也の即興に続いて舞台は続く。
私は安堵しながら皆の演技を見続ける。
無事千秋楽が終わって私は一足先に寮に帰って支配人と目一杯はしゃぎながら料理を作り始めた。
お疲れ様、と心を込めて作る。
いづみのためにカレーもスパイスを利かしたものを作る。
「ただいま〜」
いづみの声に続いて皆も帰ってくる。
私は走って玄関に向かった。
「おかえりなさい!!」
私を見て皆微笑んでくれた。
「「ただいま!」」
その夜はどんちゃん騒ぎでお酒を飲める人はお酒を飲んで乾杯をした。
料理もみるみるうちに減っていて嬉しい。
「…それにしてもいづみ…凄いよね」
私がそう言うと彼女は笑って水を渡す。
「雨国ずっとそればっかじゃん。…でもさ、この先まだ3公演残ってて、15人見つけなきゃ。」
その言葉を聞いて私も頷く。
そして呟いた。
「私邪魔にならない?」
その言葉を聞いていた咲也くんが私を見て言う。
「邪魔になんかなりません!俺、雨国さんに殺陣教えて貰えて良かったと思ってます!監督にも感謝しかないですし」
いづみと私は目が潤んでしまっている。
それに続いて至さんも頷いた。
「俺も、監督さんが誘ってくれて、雨国さんが色々話聞いてくれて続けようと思った」
「俺もっすよ。監督が台本を面白いって言ってくれて、 雨国さんのご飯もあって…」
「私もダヨ〜!2人が私達を転倒させたネ!」
綴くんもシトロンさんも続く。真澄くんが小さく訂正した。
「転倒じゃなくて、成長。…俺もそう思う」
泣きそうになっていづみを見ると彼女も同じく。
私達は何とか耐えながら夜を楽しんだ。