第4章 土翁と空夜のアリア
ハンカチを手に取った神田にゴシゴシと口元を拭われる。
乱暴だから少し痛い。
「男がメソメソしやがって気色悪ぃ」
男は怒り心頭で顔が興奮した猿のように真っ赤だ。
「俺達探索部隊はお前らエクソシストの下で命懸けでサポートしてやってるのに…それを…それを…っ」
激昂したバズは拳を振り上げる。
「メシがマズくなるだと───!!」
振り下ろされた拳を容易く避けるとバズの首を絞める。
バズから苦しげな声が漏れた。
「“サポートしてやってる“だ?」
鼻で笑う神田の目は氷のように冷たい。
「違げーだろ、サポートしかできねェんだろ。勘違いするな。お前らはイノセンスに選ばれなかったハズレ者だ」
首を絞める力が強くなり、バズは息ができず泡を吹き始める。
「お前らだけじゃ悪魔は殺せない。他人をとやかく言う暇があったらイノセンスを見つけてこい」
その時、神田の腕を赤黒い手が掴んだ。
「ストップ」
突如現れたアレンは神田を止めた。
「関係ないとこ悪いですけど、そういう言い方はないと思いますよ」
「放せよモヤシ」
神田は気絶しているファインダーを睨みつけ、アレンには目もくれない。
「アレンです」
神田はチラッとアレンを見てニヤッと笑った。
「はっ。1ヶ月で殉職なかったら覚えてやるよ。ここじゃパタパタ死んでく奴が多いからな、こいつらみたいに」
神田の手が緩むと意識を失ったバズが床に倒れた。
「だからそういう言い方はないでしょ」
アレンと神田の雰囲気は険悪だ。
「待って!」
流石にエクソシスト同士で喧嘩はダメだ。
神田の手を掴むアレンの腕にしがみつく。
驚く2人にはアワアワと声を上げる。
「お、落ち着いて、あれは私のせいっ…ぬぁ!」
不機嫌な神田に頭を鷲掴みされるギリギリと力が込められる。
「さっきまでの態度はどうした」
神田はがファインダーに舐められていて怒っているのに本人はケロッとしている。先程の事など水に流した様に。
だから同じ事が続くのだ。
「ぼ、暴力反対」
「ちょっ、痛がってるじゃないですか!」
「触んな」
神田はアレンの手を振り払っての首根っこを引っ張る。