第1章 無自覚な恋愛
「ぼんさ〜ん、暑いですよ〜」
「あ〜、暑いなぁ〜」
ある日のドズル社リビングにて、おらふくんとぼんさんが床に寝そべってそんなことをボヤいていた。
「そんなに暑いなら、二人とも離れた方がいいんじゃない?」
と僕が言うと、二人はそうだなぁと口々に言うものの、ぼんさんは上に乗っかってるおらふくんに避けろとも言わないし、おらふくんもおらふくんで、寝っ転がるぼんさんの背中の上で伸びるばかりだ。
「ねぇ、MEN」
「なんすか?」
僕は、そこで建材整理をしていたMENに話しかけた。MENはこちらを振り向いて僕の方を見る。
「最近、ぼんさんとおらふくんの距離近くない?」
「あ〜〜……ドズルさんもそう思いますよね?」
「え、じゃあMENもそう思ってたんだ」
と僕が驚けば、MENは小さく笑った。
「あれはどう見ても気づきますって。逆に二人は、気づかないと思ったんですかね」
「やっぱMENも、そう思ってたんだね」
どうやら僕とMENは同じことを考えていたらしい。
「僕、ぼんさんにおらふくんと付き合ってるのか聞いてみるよ」
「……聞いてどうするんです?」
「付き合ってるのなら、もうちょっと距離感考えてって言うよ」
「まぁ、確かに見てるだけで暑苦しいですからねぇ」
「だからMENは、おらふくんに聞いてみてよ。ぼんさんと付き合ってるのかって」
「それはいいっすけど……」MENは意味深そうに顔をしかめた。「もし付き合ってなかった場合、面倒っすよ」
「……まぁ、確かにね」
無自覚の恋愛というやつか。二人ならそういうのもあり得そう。僕が黙り込むと、一応聞いてみますわ、とMENが立ち上がっておらふくんに声を掛けに行った。もう聞き出すらしい。
直後、おんりーがこの世界のクーラーともなる氷ブロックを大量に抱えて帰ってきた。
「戻りました……ってドズルさん、なんか顔が変ですよ?」
「これは〜……いつも通りだから!」
察しがいいおんりーに見抜かれないように誤魔化して、僕はぼんさんに話しかけに行った。