第3章 ドキドキ温泉?
ある日、MENが拠点の近くで温泉を作った。
「へぇ、これ全部MENが作ったの?」
と僕が聞くと、ツルハシを肩に担ぎながらMENはニカリと笑った。
「まぁ、そうっすね」
ちょっと照れくさそうに、それでいて達成感に満ち溢れたように自分が作った温泉を眺めるMENは、MENらしい回答だな、と僕は思った。MENはこういった建築を好む傾向があったし、手先も器用なのは僕たちも知っていることだ。
「じゃあ早速入ろう!」
と僕が言うと、ちょっと待って下さいとMENが渋った。
「実は、まだ更衣室作ってないんですよ」
確かに、MENの作った温泉は仕切りもない野ざらしな場所に作られていた。MENはまだまだこだわりたいのだろう。どうやらサウナもないみたいだし。
「でも、僕たち男同士なんだからいいんじゃない?」
拠点のすぐそばだったので、着替えは拠点内でもいいと思っていた。タオルになるようなブロックはいくらでもあったし、恥ずかしいならそれを使えばいい気がした。
「まぁ、そうなんですが……」MENは僕を見て声を潜めた。「……ぼんおらのこと、どうします?」
「ああ、そのこと?」
そう、僕らの議題はいつもぼんおらの話ばかりだった。ぼんおらはいつの間にか僕たちの目の前でイチャイチャし始める(?)ので、目のやりどころに困っていたのだ。
そんな話をしてだいぶ経った今日、ぼんおらの距離はいつものことのように近いし、それに加え温泉に一緒に入ろうとなんて言ったら、とうとうやるのかもしれない、と僕も多分MENもそう思っていた。
「うーん、そう考えると難しいよね……」
と僕が腕を組むと、MENも難しい顔をしてですよね、と答える。いつでも監視出来るように、仕切りの壁はいらないだろうか、なんて半ば本気の言い方をするので、僕は内心驚いた。
「とりあえず、様子を見てみようよ」
僕はそう決断した。
「そうっすね」MENはこういう時の僕の言葉を否定したことがない。「じゃあまずは洗い場でも作っておきますわ」
サウナも作って置いて、と言いたかったが、僕らの議題はそこではない。また今度でいいか、と見えない少し先の将来を不安に思った。