第4章 あたたかな 〜銀時篇〜
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薬を手に入れた過去は、今は昔。菊の体にくまなく薬品を塗った銀時は今窮地に立たされていた。
「こんなに気持ちよかったのは、生まれて初めて。」
この一言を言われて理性を保てる男は、果たして男なのだろうか…。
薬のおかげで菊の体は生娘のように美しい。その上、先ほど子宮に塗る為に触れた菊の体は熱く、マッサージをしていた時とは別の意味で熱した肌に触れていたのだ。泣き始めた時は焦ったが、今は向けられる視線がヤバい。とにかくヤバい。切ない表情に赤い顔、トドメとばかりに潤んだ目で見つめられれば、心に何かグッと来るものがある。むしろドストライク過ぎて心臓と息子が危ない。しかし、菊の続けた言葉で下流へ流れていた思考が引き戻される。
「いつもは、痛いだけだったから。叩かれて、殴られて、揉み潰されて、引っ掻かれて、縛られて…。こんなに優しく触れられたのは、初めて。… 知らなかった。こんなに気持ちの良いものだったなんて。」
そうか、知らなかったのか。銀時が菊に触られる時、妙に緊張していた事に納得した。普通なら快感を得られるその行為は、菊に取ってただの拷問でしかなかったのだ。今まで行為の素晴らしさを知らなかったのは可哀想に思えた。が、その反面、初めて菊に肌と肌が触れ合う気持ち良さを教えた男として、喜ばしい気持ちが沸き上がる。
そのまま腕の中で擦り寄る菊を大事に抱え直し、二人だけの時間を堪能する。その内眠りについた菊に優しく着物を着せてやれば、銀時は布団を用意して菊をそっとそこに横たわらせた。空の薬瓶やタオルケット等を持ち、静かに部屋を去る。
部屋を出る前に見た菊の顔は、今までに無いほど安らいでいた。