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さよなら桃源郷(銀魂:銀時夢)

第1章 序章


『吉原』

 それは男の天国であり、女の地獄である。男は地上の昼夜など気にせず、常夜のこの街へ快楽を求め足を運ぶ。夜の明けない鳥籠に捕らわれた女達はそれぞれ値がつけられ、金と引き換えに股を開く。真の愛など無いその行為。しかし、あたかも同意のもとで床で過ごしている錯覚が欲しい故に、男は女に恋人の真似事を強いる。望まぬ他人の熱に嫌悪感を覚えながらも、女は相手を満足させる為それに応える。

 客を満足させなければ金は入ってこない。金が入らねば飯はない。飯がなければ命はない。命を繋ぐには脚を開く事に躊躇してはならないのだ。どんなに屈辱的でも。

 その事実は、何十年振りに日が昇った今の吉原でも変わらなかった。噂によれば一人の侍が吉原の独裁者、鳳仙を倒したらしい。街の中心部では派手な戦闘が行われ、常夜の闇をその男は晴らした。幼い頃にしか目にした事の無い日の光に一時は感激したが、正直、今はどうでも良い。

 中心部の女達は念願の自由を手に入れ、自由に水商売をし続けていると言う。女としての尊厳を失わず、胸を張って己の出来る仕事をしているそうだ。しかし、私が遊女として住まうこの一角は、未だ闇に捕らわれている。鳳仙が存命していた頃と何一つ変わらない。否、現状は鳳仙が居た頃よりも酷くなっている。
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