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さよなら桃源郷(銀魂:銀時夢)

第8章 子の心、親知らず


「銀兄さん!」

 授業も終わり寺子屋の門前で立ちすくんでいれば、銀時の姿が遠くに見えた。のそのそと怠そうに歩く彼を確認し、揚羽は教材を包んだ風呂敷を抱え直してバタバタと銀時に走り寄る。

 万事屋での食事当番と同じように、揚羽の迎えもローテーションで行われていた。普通の登下校なら近所の子供達が共に歩くのだが、生憎と万事屋があるのは繁華街の中。日が沈むと華やかになる夜の町は大人こそ集まるが、子連れの家族が付近で暮らすのは稀だ。一応ではあるが、かまっ娘倶楽部のママ、西郷特盛の息子も繁華街で暮らしている子供なので朝は共に登校している。しかし西郷の息子であるてる彦は上級生だった。

 てる彦と揚羽の通う寺子屋は少し変わっており、一年から三年の下級生は授業が午後三時まで、四年から六年の上級生は午後四時までの授業を受けていた。それ故、下校時間が合わない。家へ帰る時はどうしても揚羽一人になってしまうのだ。一時間ほど時間を潰して、帰りもてる彦と共にするのも可能だが、それよりも揚羽は早く姐に会いたかった。筋金入りのシスコンには、姐に会えないその一時間でさえ惜しい。その要望に答え、このお迎え当番も出来上がったのだ。

 そして本日は冒頭の通り、銀時が仕事帰りに揚羽を迎えに来る番だった。
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