第1章 突然の呼び出し
「アンか?」
一番求めていた声で名前を呼ばれ、
勢いよく振り向くと、
そこにはエルヴィンが立っていた。
「君がこんなところにいるなんて珍しいな。
誰かの部屋に用事か?」
エルヴィンは少し驚いた表情を見せる。
ミケ分隊長に呼び出されているけど、
実際は心の底から行きたくなくて、
出来ることなら
エルヴィン団長の部屋に行きたいです。
……なんてことは
当たり前だが言える訳もなく、
「ちょっとミケ分隊長の部屋に……」
と、言いかけたところで
「ミケ?君はミケと関係があるのか?」
と、エルヴィンの驚嘆の声で遮られた。
……関係?
関係……関係って!
「い、いや!関係はないです!
何も!一切!呼び出されただけです!
呼び出されたのは今日が初めてです!」
思わず声を上げて否定する。
焦りで文法もめちゃくちゃだが
気にする余裕はない。
エルヴィン団長にだけは、
絶対勘違いされたくない。
私が関係を持ちたいのは貴方だけです!
そう言ってしまえたらどれだけ楽か。
……そんなことを言う勇気は、勿論ない。