第9章 恋をすると
思わず頬が緩んだ。
最初ミケに、
お前はエルヴィンを見過ぎだ。
と言われた時のことを思い出す。
こんな立派な人でも、恋をするとそうなるのか。
そう思うと、何故か妙な安心感を覚えた。
「素敵な女性でしたね。」
アンがそう言って
エルヴィンに視線を向けると
「君もそう思うか?」
エルヴィンは顔を綻ばせる。
その嬉しそうな表情を見て、
思わず吹き出してしまうと
「……なんだ。
私はまた感情が顔に出ていたか……」
エルヴィンは片手で顔を覆った。
「エルヴィン団長、
うまくいくといいですね。」
自分でも驚くほど自然に、
そんな言葉が零れ出た。
「ありがとう。」
エルヴィンはそれだけ言うと
また前を向き、
基地に向けて歩き出した。