第8章 優しい表情、そして違和感
「団長、どこからこんな可愛いもの
つけてきたんですか?」
そう言って差し出した手には、
ピンクの花びらが乗っていた。
「……恥ずかしいな、いつからついてたんだ?」
エルヴィンは花びらを手渡され、小さく笑う。
「エルヴィン団長は背が高いから、
座ってないと誰も気が付かないですよ。」
女性は微笑み返すと、
近くの机に置いていたお盆を持ち
「それでは、ごゆっくり。」
と、ミケとアンに笑顔を向け、
厨房へ入って行った。
ここに来てから、
エルヴィンの意外な一面しか
見ていない気がする。
今まで見たことのない程の
優しい表情で笑ったかと思えば、
そんな顔も出来るのか……
と思うような照れくさそうな表情になり
そして今は手渡された花びらを見つめて
穏やかな表情を浮かべている。
……団長相手に、こんなことを
思うのはどうかと思ったが、
その姿は、まるで、恋する乙女のようだった。