第8章 優しい表情、そして違和感
しばらくすると料理が運ばれて来て、
三人で食事を始める。
「おいしい!」
思わず声を上げると、
グラスに水を注いでいた女性は
「本当ですか?
ありがとうございます。」
と、顔を綻ばせた。
「兵団の料理人さんに褒められると、
かなり嬉しいですね。」
「君の料理は兵団でも優に通用するよ。
うちに来てくれたらいいのに。」
エルヴィンはそう言って女性を見つめる。
「そんな。無理ですよ。
私はここで細々と暮らす方が
性に合ってますから。」
女性は少し笑いながら
エルヴィンを見つめ返した。
「……君が来てくれたら、
もっと仕事が捗るのにな。」
そう言うエルヴィンの表情はとても優しく、
それが本音だという事はすぐに分かった。
「またそんな上手いこと言って。
そもそも団長は十分お仕事
頑張ってるじゃないですか。
それ以上働いてどうするんですか。」
女性はそう言った後、
何かに気付いたように
そっとエルヴィンの髪に触れた。