第8章 優しい表情、そして違和感
ミケに釣られてエルヴィンの方を向くと
「アン。私がいつも
食べているものを注文したが、
他に何か食べたいものはあるか?」
エルヴィンは優しい表情で
アンにメニューを差し出した。
「だっ、大丈夫です!
ありがとうございます!」
思わず声を張るアンを見て、
ミケは手で顔を覆って肩を震わせている。
………ミケの言う通りだった。
正面にいると、常にエルヴィンが視界に入る。
ずっとこの緊張状態を続けながら
食事をするのか……
何故座る前に教えてくれなかったんだ……!
そんなことを思いつつミケを横目で見ると、
まだ小さく笑っていて
それが腹立たしくもあったが、
ミケの笑っている表情を見るのは
嬉しくもあった。