第8章 優しい表情、そして違和感
初対面の男が急に首筋の匂いを嗅ぎ始めて、
ここまで冷静でいられる女性に驚きつつ
ミケが他の女性の匂いを
興味深げに嗅いでいる姿を見ていると、
なんだか胸の奥がチクチクするような
何とも言えない気分になり、思わず目を逸らす。
私じゃなくても、
あんな穏やかな表情で匂いを嗅ぐのか。
この嫉妬に似たような感情は、
きっと今まで
ミケに大事に抱かれすぎていたから
芽生えたんだろう……
「ミケ。そろそろいいだろう。」
痺れを切らしたエルヴィンは、
ミケの首元を掴んで女性から引き離す。
……団長も妬いてたのかな?
そう思いながらエルヴィンの顔を盗み見ると
かなり困惑した表情を浮かべていた。