第8章 優しい表情、そして違和感
「わざわざこんな辺鄙な場所にある食堂まで
来て下さってありがとうございます。
大したもてなしも出来ませんが、
ゆっくりして行って下さいね。」
女性は落ち着いた声でそう言った。
見た感じ、自分より年下か
同い年くらいに見える。
小柄で穏やかな優しい雰囲気があり、
顔立ちも綺麗だ。
……今のところ、
勝てそうな部分は見当たらない……
なんてことを思っていると、
ミケが女性に近付き、匂いを嗅ぎ始めた。
「………ん?
これは新手の挨拶ですか?」
女性は特に動揺する様子もなく、
ミケに首筋の匂いを嗅がれながら
エルヴィンに問いかける。
「ああ。悪いね。
彼は初対面の相手の匂いを
嗅ぐクセがあるんだ。」
エルヴィンはバツが悪そうにそう言うと、
「いえ。気が済むまで
嗅いでもらって大丈夫ですけど、
これで嫌そうな顔されたら悲しいですね……」
女性は冗談めかして答えた。