第8章 優しい表情、そして違和感
「これだからお前を連れて行くのを
渋っていたんだぞ。」
小さくため息を吐くエルヴィンに
「エルヴィン団長、大丈夫ですよ。
嫌がって嗅がれない方が切ないですし。」
と、女性は笑いながらエルヴィンの袖を掴む。
「………すまないな。」
そう言ったエルヴィンは、
小柄な女性の頭を優しく撫でた。
エルヴィンがあんな優しい表情で
女性の髪を撫でるところを見るのは
初めてだった。
そもそも、エルヴィンが
女性の肩以外に触れたところを見たことがない。
勘違いされるのを防ぐため、
必要以上に女性に触れないようにしていると
噂で聞いたことがある。
……彼女には、勘違いではない
自分の想いを知ってもらってもいい、
ということか。