第7章 ミケの思惑
「……食事を持ち帰るだけの為に、
わざわざクロルバ区の食堂まで
行ってるってことですか?」
アンは先を歩くエルヴィンの背中を見ながら、
小声でミケに問いかける。
「そうだ。暇を見つけては
通っているようだからな。」
ミケはアンを横目で見ながら答えた。
「早々に無理な気がしてきたんですけど……」
思わずため息が漏れる。
団長職はとにかく忙しい筈なのに、
その合間を縫ってまで、
想い人のいる食堂に通うとは……
相当想い入れている証拠じゃないか。
「会う前から
そんなに落胆した顔をしてどうする。」
ミケはフッと息を漏らすと、
アンの肩を優しく叩いた。
「諦めるにしても、諦めないにしても
敵を知ることは大事だ。」
………敵、ではないけど。
そんなどうでもいい部分に
心の中で突っ込みを入れながら
アンは重い足取りで
エルヴィンの後を付いて歩いた。