第6章 執着と後悔
「それなら諦めなければいいだろう。
勝手に無理だと決めつけて諦めて、
お前は今までそれで後悔したことはないのか?」
言い返す言葉もなかった。
それは恋愛に対してだけではない。
何かに執着心を持つことが恰好悪いと思って
少しでも不可能だと思えば諦め、
自分にできることだけを必死にやって来た。
今もそれが悪いことだとは思っていない。
でも、もしあの時諦めなかったら
違う未来があったんじゃないか、
そう思う事は多々あった。
だけどそれを認めたくなくて
今まで考えないように生きてきたのに。
「お前が今まで
エルヴィンに少しでも近付こうと
努力していたことはよく知ってる。
その努力を無駄にしたくないと思った。」
ミケは俯くアンの肩に手を置いた。