第1章 突然の呼び出し
だが、アンに話しかけて来たその人は、
まるで別人のように柔らかい表情で、
自然と鼓動が早くなる。
「……緊張しているのかな?」
エルヴィンを見つめたまま固まる
アンの肩を優しく叩くと、
「大丈夫だ。ここで働く者は
私も含め変わり者が多いが、
悪い奴らではない。
だが、もし何か困ったことがあったら
私に相談しなさい。」
そう言って、再びアンに笑いかけた。
………綺麗だと思った。
男の人相手に、そんなことを思ったのは
初めてだったが、
そう思わずにはいられない程に、
エルヴィンの笑顔は眩しかった。
「………はい。」
やっとそれだけ言ったアンの心は、
一気にエルヴィンの笑顔に貫かれる。
これが噂に聞く
“一目惚れ”というやつなのか。
そんな現象が、現実志向の
自分の身にも起きるのか。
頭の中では戸惑いつつも、
この感情はとても心地良く暖かかった。